白血病患者にみられた左室内腫瘤

 

伊賀幹二 *林孝昌、小西孝

天理よろづ相談所病院 循環器内科 *血液内科

 

Left ventricular mass in a patient with leukemia

 

 

Kanji Iga MD, Takamasa Hayashi* MD, Takashi Konishi MD

 

 

Department of Cardiology, *Department of Hematology, Tenri Hospital

 

 

 

 

症例 69歳男性

主訴 持続する発熱

現症 3年前より低形成白血病にて経過を観察されていたが、白血病の増悪を疑われて入院した。検査成績では、ヘモグロビン4.4g/dl、血小板1.1万/mm3、白血球700/mm3(リンパ球91%、病的芽球4%)、CRP 10.4mg/mlであった。抗白血病薬、各種抗生物質の投与にも関わらず発熱が2週間持続したため断層心エコー図が施行された。血液培養からカンジダが検出された。

診断のポイント

本例は、白血病の増悪や細菌性感染症が疑われたが、発熱出現から2週間目に施行した断層心エコー図において、弁機能や左室機能は正常であるが、約2.5cmの左室内腫瘤がみられた(Fig.1)。腫瘤は乳頭筋に付着していたが、僧帽弁に病変はなかった。腫瘤の発見後2週間で衰弱死した。

剖検では腫瘤はカリフラワー状の疣贅であり、腱索を巻き込み、乳頭筋および左室後壁に強く付着し、容易に剥がすことはできなかった(Fig.2)。腫瘤からの培養でもカンジダが検出された。組織学的にも腫瘤はカンジダの菌糸および胞子の集塊であった(Fig.3)。

真菌性心内膜炎は、形態的に正常心臓である白血病や悪性リンパ腫等の血液疾患患者に生じ、手術以外に助かる方法はないとされる。本例においても、原疾患のため手術は不可能であったが、たとえ原疾患が寛解期にあっても、疣贅は腱索を含み左室後壁に強く付着していたことから手術による摘出は困難であったと考えられた。

 

診断

Infective endocarditis due to Candida albicans

Fig.1

Two-dimensional echocardiography revealed a large homogenous mass of 2.5cm in diameter attached to the papillary muscle (PM).

Fig.2

At autopsy, the mass was proved to be strawberry-like vegetation firmly attached both to the left ventricle and chordae tendinae without involvement of the mitral valve (MV).

Fig.3

The vegetation was composed of numerous pseudo-hyphae and east. An arrow showed Chlamidospore characteristic of Candida albicans (hematoxylin and eosin staining, original magnification A;X1, B;X40, C;X200).